趣旨とお金の話

システムに飼いならされた私たちが、その外側を夢見る。
「近代化」の固定的な方向性に捕われてしまわないために、心地よい混乱を画策してみる。

これが、2014年に飼い馴らされない表現のフェスティバル「野良」を立ち上げのときに掲げた言葉です。2011年の東日本大震災に始まり、福島第一原発の事故、特定秘密保護法の施行、川内原発の再稼働、安全保障関連法の可決、マイナンバー制の導入など、さまざまな大きな問題にかこつけて、システムによる管理が強まりつつあるいま、改めて「野良」の意義をさらに深めて企画に向き合いたいという思いです。

芸術活動にはお金がつきもので、特にフェスティバルなどをやるときには助成金を獲得してから行うのが常です。でも、それらの助成金はシステムに従属する態度と背中合わせとなる面もあります。そういったことの外側でいるスタンスをなんとか探しながら、面白い企画ができないだろうか?「野良」はそういった試みであり続けたいと思います。また、そのことは同時に参加者の負担が発生することでもあり、そこに後ろめたさもあります。でも、何かを起こすことが、私たち自身に別の何かをもたらす、というようなやり方を模索したいと思うのです。この企画に参加することが、決して何かを損なうのではなく、負担した分の何かが別の形で参加者を満たせるような、あるいは別の形で新たな次の何かを生み出せるような流れを作り出して行きたい。そういった心持ちで、みなさまの大変ユニークな活動と相見えたい、とそのような思いでおります。

「野良」の収入は、一律価格のチケット制ではなく、「お花代」として貰い受けます。お客様にはお金を包むための紙を入場時に配布し、お帰りの際に個々人の判断でお金を包んで払うのですが、かなり金額にはバラツキがあります。しかし、そこにはお金を通したコミュニケーションがありました。少ない人は数十円、多い人は5,000円で、前回の「野良」のお花代の収入は83,000円でした。それに加えてクラウドファンディングによる寄付が38,000円で、これらの収入の合計から、交通費や経費のかかった方に、その金額に応じて収入を按分した額をお支払いします。ただし、全額を補完することが難しい可能性もあります。また、これとは別に観客からは「おひねり」を投げていただきます。2014年の「野良」で、手塚夏子の場合は約4,000円のおひねりをいただきました。結構投げていただけます。これは個別に全額お持ち帰りいただけます。

> また、今回は「企画テーブル」という新しいブースを考えています。そこでは、現在進行中の何らかの企画に、「野良」の現場に居合わせている人々に対する出演交渉から、実現不可能と思われるような共同企画の会議まで、会場の片隅で一晩中、素敵な密約が交わせます。その際には「お金ではない何か」の交換によって成立することも考えられます。いろいろな人が、奇跡のような出会いと企画の誕生を手にする可能性を秘めた奇跡のデーブルです。今回は、おそらく今まで関わったことのない人々のいろいろな出会いが予想されます。

参加してくださるお一人お一人の間に様々な可能性が立ち上がる様が目に浮かびます。共に面白いことを起こしていきましょう!

野良2015実行委員会
大澤寅雄、手塚夏子、鄭慶一、萩原雄太、武藤大祐(五十音順)